建築士事務所を取り巻く社会環境は変化し、それに対応するため業務内容の多様化と業務領域の拡大が求められています。建築の発想から企画・設計・施工・維持管理・除去に至るまでの、建物のライフサイクル全般にわたる「川上と川下の両方向に領域を拡げる」ことがこれからの建築士事務所の使命でなければならないと考えます。
事業企画への評価や実現可能性の判定に際して、建築の専門知識なくしては不可能な場面が頻繁に生じています、従って、企画段階での検討に際して用いられるべき科学的・客観的な方法論を確立することです。企画段階の業務を体系化し、独立した業務として位置づけることが必要です。
建築過程における建築士事務所の業務のあり方は、建築産業の仕組みとその変化の動向に深く関わっています。厳格な工事監理業務を欠かせない場合が相対的に多いため、施工者の品質管理能力を全般に高めること、そして建築士事務所の工事監理業務は建築生産活動における、より高次の機能に対応するものとしていくことが望ましいのです。
経済活動が急激な拡大を続けていた時代には、スクラップアンドビルドが合理的であるという判断のもと、新設に関わる技術的問題に置き換えることができました。しかし、今後は経済成長の鈍化に加えて資源・環境面の制約等により、既存建物の改修、いわゆるリフォームに取り組む段階にきています。
設計する側から必要な調査や創意工夫に基づく提案をもって、建築主と一緒に問題を解決する努力と処理能力が求められています。全国各地域に深く根ざした建築士事務所の協力が、団体活動の場に集約され、行政と強い信頼関係のもとに、積極的に地域に貢献する姿勢が望まれます。安心して住める豊かな住環境と、忘れかけてしまった個性あるまちづくりを、いかにして設計の分野で構築できるか、自分たちのためだけでなく、次の世代のために何を残せるかを真剣に考える時にきています。